2014/02/05

在宅介護の現場での人工呼吸器の取り扱いについて

こんばんは。まごころ介護の榎本です。
今度は、介護の法律や制度のおかしいところを書いてみるようにと広報担当からのお達しがありましたので、自分が一番深刻な問題だと思うことについて書いてみたいと思います。
厳密に言うと介護の法律、法令ではなく医師法が原因で介護の現場に問題を起こしているものですが、多くの方に知って頂きたいことでもあるのでこの問題を取り上げたいと思います。

◆人工呼吸器を付けている方への痰の吸引とは?

人工呼吸器を付けている方への痰の吸引とは、カニューレの部分から吸引機につなげたカテーテルを挿入し、気管支にへばりついている痰を気管支から取り除くことです。
↓あまり想像がつかないかと思いますので理解していただくには下の動画を見て頂くのが早いかと思います。前置きが長いので1分くらいのところから見て頂くのが良いかと思います。
痰の吸引は個人差や体調による差はあると思いますが15分から1時間おきくらいに1回はする必要があります。
対応が遅れて呼吸が詰まってしまうようなことがあると、ものの数分で致命的な事故が起こり得ます。
つまり、常に誰かがそばにいて15分から1時間おきに痰を吸引しなければいけません。

◆医師法による人工呼吸器の着脱をする人の制限

人工呼吸器の着脱は医師法やそれに対する厚生省の解釈により、医師、看護師、家族(血縁者、婚姻関係にあるもの)でなければ行えないということになっています。ヘルパーはもちろん、友人、ボランティアも人工呼吸器を外すことができないということです。
しかし、人工呼吸器を付けている方の痰の吸引は、構造上、人工呼吸器を外さなければできないように出来ています。
人工呼吸器を付けている方とそのご家族がご自宅で暮らそうとすると、人工呼吸器を付けている方で痰の吸引が必要な人の多くは体が不自由なために自分で吸引をすることが出来ません。そのため、医師か看護師か家族の誰かが誰かが15分から1時間おきに吸引が出来る体制を整える必要があります。

◆人工呼吸器を付けている方で痰の吸引が必要な人とその家族の生活

これを読んでくださっている皆さんのご家庭や友人、親戚の家庭を思い浮かべて考えてみてください。
もしその家族の中で誰か1人が人工呼吸器を付けて痰の吸引が必要な寝たきりのような状態になったとします。同居家族の誰かが常時365日24時間体制で15分から1時間おきに人工呼吸器を外して痰の吸引をしなければなりません。
看護師を常駐させることが出来れば問題は解決しますが、行政からそのような補助は出ませんし、それだけの経済力がある方ほとんどいないかと思います。
365日24時間体制ということになると1人では睡眠時間が確保出来ないので足りません。最低2人は仕事をしていないか、時間の融通が利く仕事についているような人がいなければどうにもなりません。実際にそのような家庭はほとんどないと思います。皆さんが思い浮かべたご家庭はどうでしょうか?

◆介護事業所と法令

そのような方々の生活が何とか成り立っている実態の裏には、違法であると認識しながらも人道的観点に立って呼吸器の取り外しの対応をする介護事業者、ヘルパーの存在があります。
人工呼吸器を必要とする方の多くはその他にも重度の身体障害を抱えているケースが多く、そういった方には世田谷区では一日最長17時間のヘルパーが派遣されており、人工呼吸器の着脱に対応してくれる介護事業所、ヘルパーが見つかれば在宅での療養生活が成立するというのが実状です。
しかし、ヘルパーによる人工呼吸器の着脱はボランティアとしてであっても禁止されているので、それを対応し続ければ介護事業所が法令を違反し続けることになります。
介護保険法、障害者総合支援法では、ヘルパーが法令で禁止されている行為をサービス提供中に行ったことが分かった場合、行政から支給された介護費用を行政に返還しなければならなかったり、悪質だと判断されれば事業所の運営の認可を取り上げられてしまうような状況に置かれており、実態としては日本全国に相当な数のこのような実態があると思います。

◆法令の改正を

また、こういった人工呼吸器の話はほんの一例で、このような法令がうまく出来ていない機能していないために大変な思いをされて生活をされている方がいたり、正しい職業倫理を持って仕事をしていても法令の上では違反という扱いになり、危険を冒していることになってしまっていたりする方や事業者がたくさんいると思います。
厚労省の担当者に電話で「なぜ、法令では医師、看護師以外禁止されているのに、家族は良いのか?また、さらに家族は認められているのにボランティア、ヘルパーはなぜだめなのか?」と聞いてみたところ、「本来は本当に医師、看護師しかダメなのですが、法令の解釈と、状況を加味したうえで親族、血縁者であれば意図的に危害を加える危険性が低いであろうということで厚労省では認めています。」という答えでした。
こういった本来であれば利用できるはずの医療福祉が利用できないことによって一部の人だけが大変な苦労をしなければならなかったり、志ある医療福祉関係者が法令の違反によって危険と隣り合わせになってしまったり、法令を守ることを考えて救えるはずの人も救えずにヤキモキしなければいけないような状況を少しでも減らしていけるように、実状をもっとよく見て法令を作っていって欲しいです。